科学へジャンプ・サマーキャンプ2014 報告

Jump-to-Science Summer Camp 2014 Report

全員集合写真

目的

視覚に障害のある生徒が科学にチャレンジする機会を創出し,視覚障害者同士,指導者および支援者同士のネットワークを形成する。

概要

日程:平成26年8月12日(火)~15日(金)

会場:デュープレックスセミナーホテル(茨城県守谷市)

対象:広い意味での科学分野(数学,情報,自然科学,社会科学,工学,医学,理療など)に関心を持ち,視覚障害(全盲または弱視)のある中学生・高校生。

参加者:中学生10名 高校生8名 (保護者5名)

スタッフ:44名 (内 学生サポートスタッフ17名)

主催:NPO法人サイエンス・アクセシビリティ・ネット

実施:科学へジャンプ・サマーキャンプ2014実行委員会

助成:独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもゆめ基金」

後援:全国盲学校長会

プログラム

<1日目:8月12日>

14:00~15:00 受付/オリエンテーション

16:00~16:20 開会式

16:20~18:00 ウェルカムイベント

19:30~21:00 先輩との談話会

<2日目:8月13日>

8:30~12:00 タブレット端末ワークショップ/ワークショップ1

13:00~14:30 ワークショップ2/タブレット端末ワークショップ

15:00~16:30 ワークショップ3/タブレット端末ワークショップ

19:30~21:00 ICC2013報告会

<3日目:8月14日>

ミュージアムパーク茨城県自然博物館

9:45~11:15 博物館ワークショップ1

11:30~13:00 博物館ワークショップ2

14:00~15:30 博物館見学

18:30~20:30 フェアウェルパーティー

<4日目:8月15日>

9:00~11:00 ワークショップ3

11:30~12:00 閉会式

内容

iPadやiPod Touchなどに挑戦したタブレット端末ワークショップ,茨城県自然博物館におけるワークショップ,さらに9種類のさまざまなワークショップに加え,社会や大学で活躍する先輩との談話会,昨年チェコ共和国で開催されたICC2013報告会、フェアウェルパーティー等の多彩なプログラムを実施。

タブレット端末ワークショップ 

タブレット端末を使いこなそう

(講師:氏間和仁,山口俊光)

タブレットPCの中でも、注目を集めているiPad等のタブレット端末の活用について,いくつかの体験を通して理解を深める。

弱視/全盲,初心者/経験者のクラスに分けて行う。

・基本的な操作法

・Skypeの操作

・Skypeゲーム

・色を調べよう

・QRコードを読み取ろう

・明るさを感じよう

・メールを書いてみよう

・乗り換え案内を利用しよう etc.

iPod Touchを使いこなそう

iPadを使ってみよう

博物館ワークショップ

ミュージアムパークを五感でたのしもう

(講師:柴田直人,鳥山由子,博物館スタッフ)

1.『化石のかたどり』

いろいろな化石を触察し,三葉虫の化石のレプリカ造りをする。

写真

2.『里山の生き物』

熊,鹿,狸,狐などの足の剥製を丁寧に触察し,それぞれの特徴を述べ,どんな生活をしていた動物かを推察する。

写真

3.『博物館見学』

グループに分かれ,学生サポートスタッフの誘導で館内の展示物に触れる。

ラジオを作ろう

(講師:児玉康一)

電池のいらないラジオの製作。

十文字の木の枠をつくる。十文字の枠に電線を巻き、アンテナ兼用のコイルを作る。次に、木の棒にアルミホイルを巻き付けて、コンデンサを作る。最後にゲルマニウムトランジスタとクリスタルイアホンを貼り付けて完成。できたラジオで放送を聴いてみる。

放送を聴いているところ

気体の発生と性質

(講師:鳥山由子)

自分の手で最初から最後まで実験を行い、視覚に頼らない化学実験を楽しむ。

・化学実験の基本操作

・試験管規模で水素を発生させて、マッチで点火し、爆鳴を聞く。

・二酸化炭素を発生させて石灰水に導き、石灰水の白濁を感光器で調べる。etc.

初めてマッチを擦ったところ

音楽をプログラミングしよう

(講師:井上浩一)

リズムやメロディーをパソコンに演奏させてみる。パソコンが命令したように動く感覚、命令したようにしか動かない感覚を体験する。メロディ・伴奏・リズムを分担して曲を作り上げることにチャレンジしよう。

写真

思わず話したくなる数学

~ねぇねぇ素数ってさぁ…~

(講師:高木智代,長谷部亮治)

誰にとっても一番身近な数、「整数」,そして,その中でも基礎になる「素数」。

その面白い性質や友達に自慢したくなる整数や素数の話を、みんなで考えて見よう。

empty

身近な生活から社会をさぐる!?

(講師:松田英之,谷口真大)

「あなたの住んでいる街はどんなところ?」をテーマに、あなた自身のオリジナルの街やお店を一緒に作り上げていくワークショップ。そこにはどんな秘密が隠されているか…一緒に探ってみません?

コンビニの見取り図に触れて考えているところの写真

音の形を調べよう

(講師:新山祐介)

世の中のいろいろな音をパソコンを使って分析し、音の本当のすがたをさぐります。さらに音を図形として表して、実際にさわってみることにしましょう。

音波の形を触っているところ

即解GPS!

(講師:渡辺哲也,小林真)

カーナビやスマホなど身近な存在になっているGPSについて、その仕組みや原理を理解します。知れば知るほどその壮大なスケールに感動することでしょう。また、GPSを使ったソフトウェアを楽しみます。

町の中を歩いてGPSを使って地上絵を画いているところ

円周率πに迫る 

~手を動かして頭で計算しよう~

(講師:高村明良)

図に触れながら円周率の意味を考えたり、それがどれくらいの大きさかを計算したりする。また、円の板や物差しなどを使って、実際に測って得られた数値から円周率を計算してみる。

お菓子のパイを取り出しているところの写真

数列と漸化式

(講師:田中仁)

数列 0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, …をフィボナッチ数列といいます。この数列はどんな法則から作られているのかをしり,その一般項を一つの数式で与えることによって,この数列を数学を使って理解しましょう。

テキストの点字を読んでいるところ

フェアウェルパーティ

全員で楽しくおしゃべりをしながら会食した後、宿泊部屋別対向のクイズ大会がありました。優勝したのは…?

クイズ大会の写真

大声出し競争。最大観測結果は79dB。

参加生徒の感想

empty タブレット端末のワークショップでは、Skypeが初めて使えてうれしかったです。

empty お借りしたiPadでSkypeやLINEを利用して友人とコミュニケーションをとったり、音楽を聴いたり、ゲームをしたり、「iよむべえ」で上手に写真を撮る練習をしたり、小さな問題集をPDFにして拡大して読んだり…色々な使い方を試しています。

empty いちばん印象に残ったワークショップは「ラジオを作ろう」です。完成したときはとてもうれしく、自分で作ったラジオで放送が聞けることに驚きました。

empty 「気体の発生と性質」でマッチをする時は、ドキドキしたけれど、することができた時は、達成感を感じました。

empty 数学のワークショップでは、いろいろな法則について学びました。数学の決まりを意識して問題を解いてみれば新しい発見ができそうです。

empty 身近な生活から社会を探る」では、コンビニひとつでも思わぬ策略があるんだとびっくりしました。

empty 「音楽をプログラミングしよう」では、コンピューターを使って、リズムを作ったり、メロディーを弾いたりしました。自分のパソコンを持ったら、自分で1曲音楽を作ってみたいです。本当に多くの種類の楽器の音があってびっくりしました。

empty はく製にじっくり触れて肉食か草食かを考えるというのは初めてだったし、動物の足の形で肉食か草食か、何を食べていたのかがわかるということに驚きました。

empty 化石のレプリカ作りでは、化石の型に石こうを流し込んで作るということと、貴重な化石があり、どこにも持ち運びができないから、レプリカを作るという理由も知りました。私が作った化石は宝物です

empty 「即解GPS!」では、守谷の街を歩いて、GPSを使って、地上絵を描きました。僕は、馬を描くことにしました。絵は、描ききれませんでしたが、楽しかったです。

empty 受講したワークショップの中で、もっとも不思議に思ったのは、「音の形を調べよう」です。音の種類は波形の形により変わり、その波形にはいろいろなものがあるということ、雑音には、波形に規則性がないということも知りました。しかし、自分たちの声を録音し、波形を調べたところ、規則性が見出せませんでした。ということは、人の声は、「雑音」?

empty さまざまなワークショップに取り組む中で、「これはどういうことだろう?」とか「どうしてこうなるんだろう?」といった疑問が生まれました。そのたくさんの疑問を解こうとすることが、「学ぶ」ということだと思います。

empty 先輩との談話会では、先輩方の話を聞き、その後に実際に話す中で、みなさんがいろいろな苦労され、活動されているのだなあと思いました。自分も頑張らないといけないなと思いました。

empty このサマーキャンプでたくさんのことを教えて下さった先生方、たくさん話を聞かせて下さった先輩スタッフの皆様、生活面で助けて下さったサポートスタッフの皆様、本当にお世話になりました。また次の機会があれば参加したいです。